「ドイツ語検定」と聞くと、独検やゲーテインスティトゥートの試験を想像する人が多いと思います。
英語でも「英検」や「TOEIC」「TOEFL」など様々な機関が主催している試験があるように、ドイツ語の試験と言えども様々な検定試験があります。
今回は世界中で受けられているポピュラーな7つのドイツ語検定試験を比較して紹介していきます。
7つのドイツ語の検定試験
- ゲーテドイツ語検定試験
- telc(The European Language Certificates)
- オーストリア政府公認ドイツ語能力検定試験(ÖSD)
- Inlingua
- TestDaF
- DSH(Deutsche Sprach Prüfung für den Hochschulzugang)
- 独検(ドイツ語技能検定試験)
以上、有名な7つのドイツ語検定試験です。
最もよく聞くのがゲーテドイツ語検定試験だと思いますが、日本で受けられるのは独検とゲーテドイツ語検定の2つだけです。
「ドイツ語資格」として日本の履歴書などに記載できるのは独検かゲーテのみ、と言われることが多いみたいですが、たしかにこの2つは日本でポピュラーですが、独検は残念ながら海外では通用しません。
あくまでも日本でドイツ語の能力を証明することができるという検定が独検です。
ヨーロッパ言語共通参照枠に沿った検定
ヨーロッパ言語共通参照枠・CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)とは、ヨーロッパ全体で外国語の学習者の習得状況を示す際に用いられるガイドライン。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨーロッパ言語共通参照枠
このヨーロッパ言語共通参照枠・CEFRをかんたんに言うと、ヨーロッパで定められている外国語の習得度合いをA1〜C2までの6段階で評価する制度のことです。
- A1…初学者(簡単なドイツ語が理解できる)
- A2…初級者(日常的なコミュニケーションが取れる)
- B1…中級者(日常テーマについて理解し、意見を述べ、説明できる)
- B2…準上級者(複雑なドイツ語を理解できる)
- C1…上級者(不自由なくドイツ語を使える)
- C2…熟達した言語使用者(ほぼネイティヴ)
これらの基準はヨーロッパの他の言語の試験でも採用されていて、
例えば「フランス語のB1を持っている」と言われれば、その人がどの程度フランス語を理解できるのかが大体わかるというわけです。
日本の協会主催の独検以外はこのガイドラインに沿った検定であり、世界中で通用するドイツ語資格となります。
ゲーテドイツ語検定試験
全世界に一番知られているのはこのゲーテドイツ語検定試験かと思います。
ドイツに本部を置くドイツ語学校、ゲーテインスティトゥートが運営する試験です。
A1〜C2の6つのレベルの試験があります。
試験は4つの科目で構成されています。
- Lesen リーディング
- Hören リスニング
- Schreiben ライティング
- Sprechen 口頭試験
大学によりますが、ドイツの大学へ正規入学する際に必要なレベルはだいたいB1〜C1の間です。
A1〜C2で分けれれるドイツ語資格を取ろうと思えば、日本国内ではこのゲーテでのみ受験ができます。
なので東京・大阪のどちらかで受けることになります。
私はB1の試験はドイツのゲーテで取ったので日本のゲーテの試験の雰囲気はわかりませんが、特にSprechen(面接)の試験は日本で受けた方が受かりやすいとちまたでは言われています。
パートナーと二人一組での面接なので、パートナーにも依るところがあり、おそらく日本人同志の方が発音が聞き取りやすかったりパートナー同士のレベルが似ているということがあるのだと思います。
telc
telcで取れるA1〜C2の検定資格はゲーテの資格と同じく「ヨーロッパ言語共通参照枠に沿った検定」なので、証明できるレベルは同じです。
ただ日本ではあまり知名度がなく、日本での試験実施もありませんがドイツではかなりポピュラーな試験です。
ドイツでゲーテ以外の語学学校へ行くと、このtelcの試験が実施されている場合が多いです。
試験科目などの構成はゲーテと全く同じですが、心持ちtelcの試験の方がゲーテよりも若干易しいと思います。
これは実際にB1の試験問題を解いてみても感じたことで、周りの留学仲間も声をそろえて言っているので、本当に受かる自信がないという人はゲーテよりtelcで受けた方が受かりやすいかもしれません。
ただ日本では受けられないのが難点です。
オーストリア政府公認ドイツ語能力検定試験
通称ÖSDと呼ばれるこのオーストリア政府公認ドイツ語能力検定試験は、基本的にはゲーテやtelcと同じシステムです。
A1〜C2までの6つのレベルの試験があります。
なので証明できるレベルとしてはゲーテなどと変わりませんが、オーストリアではこちらの方が主流なので、現地で試験を受ける場合はÖSDで受ける人が多いです。
試験科目はゲーテやtelcと同じく、4つの科目で構成されています。
一つ注意すべきなのは、このÖSDの試験は一度受験してから4週間経過してからでないと再受験することができません。
なので大学などに提出する必要がある人は余裕をもって受験することをおすすめします。
Inlingua
これはマイナーなドイツ語試験ですが、私が持っているB2の資格はこのInlinguaで取ったものです。
ドイツの大学院在学中に通っていたドイツ語の先生がここの協会の認定講師だったのでゲーテやtelcでなくInlinguaで試験を受けました。
試験科目や構成はゲーテやtelcと変わりませんが、口頭試験は二人一組ではなく、受験者一人につき試験監二人でした。
難易度は他とさほど変わりませんが、採点方法が少し違います。
ゲーテやtelcは100点満点で60点以上取れたら合格となりますが、Inlinguaは80点満点で6割なので48点以上で合格ということになります。
ですが口頭試験の点数が6割未満だとすべて不合格となる決まりだったはずですが、採点方法は試験官にしかわからないので受験の際に確認してみてください。
TestDaF
TestDaFは上記の試験とは全く異なる試験制度のドイツ語検定です。
主にドイツの工科大学や総合大学などの分野の入学資格として必要になる検定です。
試験の性質自体が異なるので比較しにくいですが、レベルはとても高く、B2〜C1に相当するレベルが求められます。
とはいえ、TestDaFは合格・不合格という分け方というより、自分の試験結果によって項目ごとにレベル分けされます。
TDN 3、TDN 4、TDN5の3段階で評価され、TDN 5が最も高いレベルなのですべての科目がTDN 5と判断されればドイツ内ほとんどの大学で入学資格を得ることができます。
(各大学の入学試験はまた別にありますが。)
実際に試験を受けたことがないのでわかりませんが、近くにあった工科大学ではこのTestDaFは入学に必須らしく、留学生の外国人たちもかなりドイツ語に長けている人ばかりでした。
音大でこのTestDaFを必要する学校は聞いたことがないので、音大生は安心してください。笑
DSH
このDSH(Deutsche Sprach Prüfung für den Hochschulzugang)は名前のとおり、ドイツの大学へ入学するためのドイツ語試験で、ドイツの各大学で実施されています。
この試験に受からなければ入学できない、もしくは入学後強制退学ということになってしまいます。
各大学が実施しているので試験内容やレベルには多少違いがあるみたいですが、基本的に自身の受験したい大学で受けることになります。
レベルは、DSH -1、DHS-2、DSH-3の三段階に分けられ、DSH-2以上を取れれば大学へ入学を許可されるようです。
この辺は各大学によって厳しさは変わってきます。
レベルで言えばTestDaFと同等もしくはそれ以上、ゲーテで言えばC2に相当するので、ドイツ語試験の中では最難関と言えます。
たしかにドイツの大学でドイツ語で医療やITなどを学ぼうと思ったらドイツ人に並べるぐらいの語学力が必要とされるのは頷けますね。
日本で主催されているドイツ語試験
独検(ドイツ語技能検定試験)
独検は日本の機関が運営する、日本でのみ受験できるドイツ語検定です。
5級・4級・3級・2級・準1級・1級の6段階のレベルあります。
5級〜1級まで6つのレベルに分けられています。
5級・4級・3級・2級の試験は、
- リーディング
- リスニング
の2つの科目のみです。
準1級では上記2つに加え、1次試験合格者は後日(約1ヶ月後)、口頭試験があります。
- リーディング
- リスニング
- 口頭試験
1級はさらに、1次試験にライティング(翻訳)が追加され、1次合格者は2次試験の口頭試験があります。
- リーディング
- リスニング
- ライティング
- 口頭試験
独検は日本でしか使えない?
独検は日本での就職活動や資格として認定されやすいものの、世界共通の試験ではないので、ドイツやオーストリアへ行っても証明にならない場合がほとんどです。
ドイツの大学や大学院へ留学、または正規留学する場合やドイツ人と結婚してドイツに住む場合に必要になる証明は、ゲーテやtelcなどのA1〜C2に区分される試験の合格証もしくはTestDaFの合格証です。
なので日本で証明できればそれで良い、という場合やすでにゲーテやTestDaFの合格証は持っているが日本で証明できるものが欲しいという人ならば受ける意味があると思います。
その他の検定試験
全国通訳案内士試験(ドイツ語)
日本で受けられるドイツ語能力を証明できる試験としてはもうひとつ、この「全国通訳案内士試験」があります。
この全国通訳案内士はドイツ語以外にも様々な言語ごとに試験が実施されています。
この試験ではドイツ語の試験以外にも地理や日本地図についての知識も問われるので、一概にドイツ語検定として位置付けされるとは言えませんが、難易度はかなり高くドイツ語の能力を証明するには十分な資格といえます。
ちなみに2019年の全国通訳士試験(ドイツ語)の合格率はわずか3.8%。
合格ラインも約7割(各科目により異なる)と、独検やその他試験と比べても厳しめです。
ちなみに独検1級に合格していると、通訳案内士試験の外国語(ドイツ語)科目筆記試験が免除されます。
おすすめのドイツ語検定
今回いろいろなドイツ語検定試験を紹介してきましたが、もしひとつだけ選ぶとしたら、ゲーテのドイツ語検定をおすすめします。
日本でも海外でも通用する試験で、日本でも試験が実施されているので、B1以上であれば取っておいて損はないと思います。
ただC2はネイティブレベルなので独検1級を取るより難しいです。
一番上級レベルを証明したい、箔をつけたいという場合は独検1級なら持っていれば有利な場面があるのかなと思います。
ちなみにゲーテ・telcのドイツ語試験は各科目ごとに合格証が発行されます。
一部の音大のようにSprechenだけでもB1を持っていたら入学を許可される場合などは、SchreibenやHörenが不合格でも入学できたり、不合格になった科目だけ後から受けなおす、ということもできます。
まとめ
目的によって必要な試験は様々なので、自分の目的と需要にあった試験を選択してみてはいかがでしょうか。
かく言う私も今試験勉強の真っ最中で、独検1級を取ってみようと思っています。
独検1級の問題集や対策本はどこで調べても過去問以外ほとんどないので不便ですが、1級の勉強に使える教材をいくつか見つけたのでまた別記事で紹介しようと思います!
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