ドイツ語を公用語とする3つの国、ドイツ・オーストリア・スイス。
これらの3カ国それぞれ独自の方言を持っていますが、実は標準ドイツ語を話す国はドイツの一部地域のみ。
ドイツのハノーファー周辺でのみ標準語は話されています。
ドイツの各都市に方言が存在しますが、もはや「方言」と呼べないぐらいの別の言語のようなドイツ語が、このオーストリアドイツ語とスイスドイツ語です。
これらはドイツ人でも理解できないんです。
アクセントや語彙が違うということ意外にも文法や語順が変わったり…
そんな各々理解し合えない3カ国のドイツ語を今回は比較して紹介していきます!
三国三様のあいさつ
SpotifyのPodcastのシリーズで”Servus. Grüezi. Hallo.“というチャンネルがあります。
https://www.zeit.de/serie/servus-gruezi-hallo
ドイツ人とスイス人とオーストリア人の3人が政治や社会について討論するチャンネルです。
同じ「ドイツ語」を話す3国でも様々な違いがあり、毎回テーマごとにその違いを紹介しています。
そしてこのシリーズの名前はこの3国のあいさつから来ています。
「こんにちは」
- ドイツ:Hallo.(ハロー)/ Guten Tag.(グーテン ターク)
- オーストリア:Servus.(セアブス)/ Grüß Gott.(グリュース ゴット)
- スイス:Grüezi.(グリュエッチ)
「さようなら」も各国少しずつ違う言い方をします。
- ドイツ:Auf Wiedersehen(アウフ ヴィーダーゼーエン)
- オーストリア:Auf Wiederschauen(アウフ ヴィーダーシャウエン)
- スイス:Uf Wiederluege(ウフ ヴィーダーリューゲ)
「さようなら」より気軽に「じゃあね/バイバイ」と言う時は、
- ドイツ:Tschüss! (チュース)
- オーストリア:Pfiati di(プフィアト ディ)
- スイス:Ade!(アデー)
「いただきます・召し上がれ」は
- ドイツ:Guten Appetit! (グーテン アペティート)
- オーストリア:Mahlzeit! (マールツァイト)
- スイス:En Guete!(エン グエッテ)
食べ物に関する単語
特に違いが多いのが食べ物や買い物に関する語彙です。
ドイツとスイスで同じ言い方をするもの、スイスとドイツで同じ言い方をするもの、ドイツとオーストリアで同じ言い方をするものもありますが、
今回は3カ国すべてが違う言い方をする単語を集めてみました。
ドイツ | オーストリア | スイス | |
パン休憩 (9:00-9:30) | Brotzeit / zweites Frühstück | Jause | Znüni |
パン | Brötchen | Semmel | Brötli |
鶏肉 | Hähnchen | Hendl | Poulet |
生クリーム | Sahne | Obers | Rahm |
ノヂシャ | Feldsalat | Vogerlsalat | Nüsslisalat |
クロワッサン | Hörnchen | Kipferl | Gipfeli |
パセリ | Petersilie | Petersil | Peterli |
チーズケーキ | Käsekuchen | Topfenkuchen | Quarktorte |
炭酸飲料 | Schorle | Spritzer | Gespritzter |
袋 | Tüte | Sackerl | Sack |
パン休憩とは日本には馴染みのない文化ですが、学校などでも朝ごはんと昼ごはんの間にパンなど軽食を食べる時間が9時〜9時30分頃に設けられています。
それをドイツでは直訳で「パンの時間」という意味のBrotzeitもしくは「2回目の朝食」という意味のzweites Frühstückと言いますが、オーストリアではJause、スイスではZnüniと名付けられています。
標準ドイツ語のBrotzeitやzweites Frühstückはオーストリア人もスイス人も理解できますが、JauseやZnüniと聞いてもドイツ人は何のことか理解できません。
敬語の使い分け【siezenとduzen】
ドイツ語は日本語と同じように敬語の表現ができる言語です。
英語のYouにあたる二人称が2つあり、敬語を使う相手にはSie(あなた)、友達や家族間ではdu(君)と使い分けます。
これによって動詞の活用も変わります。
Sieを使って話すことをsiezenと言い、duを使って話すことをduzenと呼びます。
オーストリアでは基本誰に対してもsiezenを使います。
ドイツやスイスでは先生やお客さん、目上の人以外にはduzenで話しますが、最近はカフェやファーストフードなどではお客さんに対しても気軽にduzenで話しかける人が多いです。
また大学でも教授が学生に話す時でさえsiezenなので、duzenに慣れていると少し距離が遠く感じてしまいますが、由緒正しい文化を誇るオーストリアではduzenは好んで使われません。
ドイツやスイスでも一昔前はレストランなどでは必ずsiezenだったそうです。
そしてスイスはオーストリアほどではありませんが、ドイツと比べるとsiezen率は高めです。
発音の特徴
各国の発音にはそれぞれ独自の特徴があります。
ドイツ人ははっきりと発音し、イントネーションの波も大きいのが特徴。標準ドイツ語だけあってとても聞き取りやすいスタンダードな発音です。
ドイツの中でも方言があり、各方言によって違いはあるものの、南ドイツのバイエルン地方以外であれば必ず聞き取ることができます。
バイエルン地方はオーストリアやスイスに接しているため、スイスドイツ語やオーストリアドイツ語に似た発音の仕方をします。
標準ドイツ語と比べてオーストリアドイツ語は、ゆったりとした話し方で話すスピードも比較的ゆっくりです。
オーストリア人は「居心地よい、ゆったりした」という意味の“Gemütlichkeit”という言葉を大事に日々過ごしているので、
マイペースでゆったりした生き方をしている人が多く、自ずと話し方もゆっくりになっていくのでしょう。
そして発音の特徴としては言葉の端々が伸びることが多いです。
スイスドイツ語はこの中でも一番癖の強いドイツ語で、ほとんどの単語をすべて短縮したり2つの言葉をつなげて一つの単語にしたりします。
そしてgやrの発音がとても強く、喉の奥から出す雑音がとても印象に残ります。
たとえスイス人が標準ドイツ語を喋っていてもすぐにスイス人だとわかる発音です。
まとめ
以上、ドイツ・オーストリア・スイスのドイツ語の違いについて紹介してきました。
同じドイツ語でも全く違う表現があるのは外国人にとっては悩まされるところですが、比べてみると各国の文化が垣間見てておもしろいですね。
日本にはオーストリアドイツ語の本やスイスドイツ語の教科書などはないので実際に見聞きして覚えなければいけませんが、それも他国に住む楽しみのひとつですね。
ドイツとスイスに住んだ私からするとオーストリアドイツ語もとても興味深いのでいつか短期ででも住んでみたくなります。
またスイスドイツ語やオーストリアドイツ語、ドイツ語の方言については別記事に載せているので是非チェックしてみてくださいね!
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