日本の学校教育の制度は小学校6年間、中学校・高等学校それぞれ3年間と定められていますが、これは戦後にアメリカの影響で決まったカリキュラムです。
ドイツやフランスでは日本やアメリカとも全く違う学校制度が採用されています。
日本ではだいたい18歳の大学受験の際に進路を決めますが、ドイツでは小学校4年生の10歳でその選択をしなければいけません。
今回はそんな少しややこしいドイツの学校教育システム、Ausbildungssystemについてシェアしたいと思います。
ドイツは9月入学
日本では4月入学が当たり前ですが、海外ではほとんどの国で9月入学が基本となっています。
大学や大学院になれば4月入学もありますが、基本は9月にスタートします。
小学校は10歳までの4年間
まず、6歳になったら9月から小学校(Grundschule)に通いはじめ、10歳までの4年間は全員そこで勉強します。
そして日本の小学4年生にあたる10歳を迎えると、はやくも進路を選択することになります。
その決定進路によって11歳から通う学校(中学校にあたる)が分かれます。
だいたいは学校の成績によって先生と両親と相談の上で決めます。
11歳からの進路(中学校・高等学校)
進路は大きく分けて4つ。
- Gymnasium ギムナジウム
- Realschule レアルシューレ
- Hauptschule ハウプトシューレ
- Gesamtschule ゲザムトシューレ
11歳の時点で将来を決めなければいけないという点が今ドイツ内でも問題視されていますが、この時点では大きく分けて、
大学に行くor専門職につく という選択をすることになります。
それによって、小学校5〜6年次+中学校(+高等学校)で学ぶ内容、カリキュラムが変わってきます。
義務教育は9年と、日本と同じ期間でありながらも、日本のように7歳〜15歳までみんな同じ共通の勉強をする、というわけではありません。
Gymnasium ギムナジウム(3年制)
総合大学への入学を目指す人は大検のような、大学入試を受けるための資格試験、
アビトゥアー(Abitur)に合格するための勉強をする学校へ通います。
それがギムナジウムです。
音楽大学や医学大学、工科大学など一般大学へ行きたい人はみんなギムナジウムへ進みます。
現在ギムナジウムへの進学率は4割を上回っているそう。
Realschule レアルシューレ(6年)
レアルシューレは16歳で卒業してそのまま働くか、専門学校へ行くかを選択できます。
いち早く就職できるのがこのレアルシューレなので、最近は移民の子どもだちの割合がかなり増えてきているそうです。
Hauptschule ハウプトシューレ(5年)
ハウプトシューレはMeister(マイスター)を目指す人のための学校です。
「マイスター」とは、
匠・名人という意味があり
優れた技術を後年に残すことを目的に実施されているドイツ発祥の職業能力認定制度のことです。
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古くからドイツにあったマイスター制度の名残で、手に職をもつ一家の跡取りや専門職を目指す人、将来開業する人などがこのハウプトシューレに通うことになります。
レアルシューレより1年早く15歳で卒業し、その後は18歳まで定期的にBerufsschule(職業訓練学校)に通いながら、スポンサー企業で研修を積みます。
そしてその後は専門大学であるFachhochschuleに入ります。
その後やっとマイスターの資格試験を受けることができます。
Gesamtschule ゲザムトシューレ
ゲザムトシューレは上記3つすべてをかけ合わせた、最近できた学校形態です。
アビトゥアーの科目
ギムナジウムに通う人が受ける大学入試を受けるための資格試験、アビトゥアーでは
言語・文学・芸術、社会科学、数学・自然科学・技術
この7分野の中から4科目+口頭試験を選んで受験します。
このアビトゥアーに受かればほとんどの大学に入学できますが、もちろんこの試験の成績が良いほど、実際の大学入試に有利になってきます。
日本でいうセンター試験のような感覚に近いですね。
「高校」と呼べる過程がない
私が中学の時、同級生が中学卒業と同時にご両親の仕事の転勤でドイツへ移ることになりました。
ドイツには日本やアメリカの「高校」と呼べる過程が存在しないので、入学することも編入することもできなかったそうです。
結局彼は現地の英語とドイツ語学校に通いながら、大学受験の準備をすることになりました。
このように、海外からドイツへ編入しようとすると、システムの構造が違いすぎて対応できないことが多いです。
ただ、昔ドイツに占領されていたエストニアではドイツと似た学校制度が設けられているそうです。
日本人がドイツの大学へ留学する際は、履歴書には中学校のことはMittelschule(ミッテルシューレ)と書くことになります。
高等学校にあたるものはないので、High schoolと英語で言うか、Oberschule(オーバーシューレ)というのが良いでしょう。
学費が無料
ドイツではドイツ人またはヨーロッパの国籍を持っている人は学費が無料です。
大学も大学院も無料なので、経済的な事情で進路を決める必要はありません。
もちろん私立大学などでは学費がかかりますが、基本ドイツの大学は国公立が多いのでそういったところでは学費はかかりません。
数年前までは外国人でも無料でしたが留学生や移民が増えてきたため、現在はほとんどの州で1ゼメスター(半年)につき1500€(約18万)の学費を支払うことになっています。
大学進学の年齢は関係ない
ドイツではギムナジウム卒業後すぐに大学へ入学しない人も結構います。
半年〜1年ゆっくりして受ける学校を吟味してから次の年に受験したり、はたまた大人になってからもう一度大学へ行き始めたり、本当に人それぞれのタイミングで進学しています。
日本のように就職時に留年や浪人を重要視されることもないですし、大人になってから学生になることに関して偏見もありません。
その寛容さはとても生きやすくて日本より良いなと思う点でもありますね。
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